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「銀輪記」~自転車旅行の記憶~
 

八幡浜別府行きフェリー乗り場|大阿蘇①


2015.8.5 今治~別府|大阿蘇①



閑散とした夜の八幡浜フェリー乗り場。



20:30発、別府行のフェリーに乗り込むために今治から八幡浜へ移動し、待合室で時間をつぶす。20~30年前から変わっていないのではないかという感じの待合室。待っているのは、僕を含め3人くらい。なんとも寂しげな雰囲気に、フェリーはもはや時代遅れなのかなと考えたりしていた。

そんな雰囲気には似つかない陽気な音楽が流れ、搭乗を促すアナウンスが流れる。

少しでもフェリー代を浮かすために、自転車は袋詰めして手荷物として客室に持ち込むつもりだったので、よいしょと自転車の入った袋を肩にかけて搭乗口に向かった。

すると、ひとりの男性に声をかけられた。

「あ~、あなたも自転車で日本一周?」

髪はぼさぼさに延び、日焼けし、よれよれの服を着たお爺さん。はにかむ笑顔になんとも愛嬌のある。

彼は自転車で日本中をぐるぐる回っているという。八幡浜でアルバイトを見つけ、2週間くらいお金をためている最中という。お金がたまったらこのフェリーで、九州を目指そうかと思っているらしい。

なんだ、おっちゃんは今日フェリーに乗るわけではないのか。ここで寝泊まりしているか、旅人との会話を楽しみにしているか、そんな理由で待合室にいたのだろう。僕は、こういうおっちゃんと話をするのが好きだし、おっちゃんも自転車旅人をみつけ話したいことが盛りだくさんな感じ……。再度、搭乗を促すアナウンスが流れたのを機に、握手をしておっちゃんとわかれた。

「またどこかで会いましょう」

旅人同士するお決まりの挨拶。そんなこと言っても、もう二度と会うことはないだろう……僕も旅を始めたころはそんなふうに思っていた。ただ、旅をしていると縁のある人とは何度も何度も道中で会う……本当にそんなことはよくあるから、お互いある意味本気で、また会いましょうと挨拶を交わしている。


浮いた自転車代はビール代にあて、スーパーマーケットで買った半額の弁当と半額のアジの南蛮漬けを客室で食べる。昨日は僕の誕生日。20代も後半に突入したものの、この貧乏旅スタイルは一向に進歩しない。



どうやら飲みながら眠っていたようで、起きたらもう別府に到着していた。また陽気なアナウンスが流れる。タラップを降り、自転車を組み立てる。別府の町は都会。



別府駅前の一泊1600円の簡易宿泊所付き温泉銭湯へと投宿。この時間からでもチェックインしてもらえるのも有難い。番台には建物の古さとは似つかないような若いお兄さんがいた。たしか、以前来た時もこのお兄さんだった気がする。風呂は24時までとのことだったので、温泉に入ることはなかば諦めていたのだが、まだいいですよ、ゆっくりしてくださいと入らせてもらえた。なんとも頭が下がる。

広間に10枚しかれた布団は、旅人ですでにいっぱい。

もう鼾をかきながら寝ている人もいた。浴衣が肌蹴てなんとも自由な感じになっている。横の人を選ばないと、寝ている間に脚が延びて来て鬱陶しい感じになる予感がするので、慎重に寝床確保をしたいところだったが、もう空いている所か限られている。

静かに布団を一枚確保し、さっと温泉に浸かってから布団へと戻った。

明日も早いのでもう寝ようとも思ったが、ふと別府の町を歩きたくなり、外出。コンビニエンスストアで買った思いがけず不味いチューハイを片手にぶらぶらと当てもなく歩いた。


ネオンの明かり。

大声で独り言を叫ぶ酔っ払い。

駅のアナウンス。


別府という町の様子も僕の旅のスタイルも、一つも変わっていない感じがした。

つづく
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手にした一台の自転車は、思いがけず遠くへと私を連れていき、生活へと染み込み、ついに。

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